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面接

その部屋へ入ると、生温かいような むっとした空気が漂っていた。
「これを着て、手袋を付けてください。それから、マスクと帽子もお願いします。」
白衣姿の男性は言った。
「はい。」
私は彼に言われるままに、白衣と薄いゴム手袋、そして不織布のマスクと帽子を着用した。

漂ってくるニオイ・・・。40年を超える人生の中でさえ、私には全く経験のないニオイだ。しかし、それが確かに生きている物のニオイだということだけは分かる。



く、く、く、く、くちゃい!!(臭)



彼は言った。
「我々人間の方が雑菌が多いですからね。この奥の部屋へは雑菌を運び込まないように、ここでアルコール消毒をしてから入ります。」
「はい。」

そして彼は、もう一つの重い扉を開けた。
「さあ、どうぞ。お入りください。」
そう促され恐る恐る入ったその部屋には、所狭しとスチール棚が並んでいる。棚と棚との間はやっと人が一人通れるほどのスペースしかない。そしてその棚には、数え切れないほどの透明なケースがびっしりと並んで置かれていた。ケースの中で激しくうごめく小動物たち・・・。

「何匹くらい いるんでしょうか?」
「そうですねぇ。数千匹は いますね。」
そう言いながら彼は一つのケースを開けて右手を押し入れ、一匹の小動物をつかんで持ち上げた。
「仕事は、この子たちを新しいケースへ移す作業です。持つときは、このように尻尾の付け根を持ってください。尻尾の先を持つと噛まれますから気を付けて。」

私もやってみるか。言われた通り尻尾の付け根を持つと、意外と簡単に持ち上げることができた。テレビの画面でしか見たことのない小動物たち。この子たちが、私たち人間の医療を支えてくれているのだ。この子たちの命が・・・。





でも、くちゃい!!(臭)





そう、ここはコタロウがお世話になっている大学病院、医学部の研究室。この小動物というのは、ラットやマウスです。就活中の母さんが一番最初に受けた面接は、医学部研究室の「小動物の世話、実験補助」という仕事内容のものでした。他のパートに比べると、時給が少しよかった。それに、動物・爬虫類・両生類・昆虫なんでもOKな母さんですから、ラットやマウスの世話くらいできるだろう!と思って応募してみたのでした。

いや~、それにしても臭かった。ラットやマウス自体のニオイもあるんでしょうが、きっとこれは糞尿のニオイだろうと思います。ネズミを持つことに全く抵抗はないけれど、この強烈なニオイは母さんの予想を遥かに超えていました。マウス部屋には10分くらい居ただけなのに、全身にニオイが染み込んでしまったような気がして、家へ帰ってからすぐに着替えて、何度も自分の手や髪のニオイを嗅いでしまいました。

40名応募があって1名採用ということだったので、落とされるに違いないと安心していたら・・・採用の連絡がきてしまったんです。「申し訳ありませんが・・・」と丁重にお断りしました。「やります!」っていう人が いなかったんでしょうね~、きっと。田舎育ちの母さんは、牛小屋・豚小屋・鶏小屋の臭さは知っています。でも、そんなもんじゃ~なかったんですよ。それにネズミとはいえ毛が舞うし、花粉症の季節はキツイだろうな~。

ラットやマウスがあんな風にして飼われていることに衝撃を受けましたが、普通じゃ絶対に見る機会のないものを見ることが出来て、ちょっと得した気分かな。

次の面接、がんばろ~っと。
Commented by eriarie at 2010-11-02 12:25
もったいない^^。
時給とか、臭いわりには大したことなかったのかな・・・。
次、頑張って下さい。
Commented by elmer at 2010-11-02 12:46 x
こんにちは^^

そんなに臭いがあるものだったんだね。。。
確かに絶対見る機会はなさそうだけど、、、そっかぁ、次は良い仕事が見つかるといいね!

私もボチボチ仕事探さなきゃなぁ。。。
Commented by vialetto at 2010-11-02 14:56
面接体験記事があまりに面白いので、このままいろいろ受けて記事にしてほしいと思ったくらいです。
販売とか製造とか・・・まるりんさんの勤め先として普通のパートを想像していた私は驚いた!さすが、まるりんさん!

次の記事を楽しみにしてるね。ファイト~!
Commented by yuyu at 2010-11-02 21:54 x
大学病院の研究室なんてすごい。
でも仕事といったら、ほぼ毎日ですもんね。
あまり臭いのは考えちゃいますよね。

私なんて2ヵ所続けてだめでしたよ。
高望みしてたのかな。

しかし40名応募、すごいですね。
私のときも多かったみたいですが、その中で採用の連絡なんてさすがです。
次、お互いがんばりましょう☆
Commented by polepole-yururin at 2010-11-03 08:33
すごい仕事の見学をされましたね!
実は、私もその場所知っています。
主人が実験にラット、マウス使っていました。
私も、結婚する前、ときどきその場所にいきました。
いろいろと考えさせられることを垣間見ましたね~。
コタロウママ、またいろんな物の見方がえきます・・・医療のあり方・・・命のあり方など・・。
お疲れ様でした。
Commented by melmo-44 at 2010-11-04 08:02
eriarieさんへ
時給820円でした。あの仕事だったら、1,100円は
欲しいところです。
それにしても、いろんな仕事があるもんですね~。
次、がんばります!
Commented by melmo-44 at 2010-11-04 08:09
elmer さんへ
ホントにね、想像を超えるニオイだったの!2ヶ月だけの短期の仕事、とかだったら
まだ頑張れるかもしれないけど。できれば長く働けるところがいいものねぇ。

ホントはコタの通院があったりするから、パートを探すのはもう少し先の話・・・って
考えてたんだけど、家にいたくない事情があるから早めに就活スタートしちゃった^^;
Commented by melmo-44 at 2010-11-04 08:17
vialettoさんへ
マウスやラットの世話くらいできるだろう、は甘かった!履歴書の志望の動機・特技などの欄に、
「特に動物が好きというわけではありませんが、小動物・爬虫類・両生類等なんでも触れます」
って書いたの。あれで履歴書審査が通ったのかもね。
次に受けるところは、特殊じゃなくて ごく普通の仕事です^^
Commented by melmo-44 at 2010-11-04 08:26
yuyuさんへ
この大学病院すごく大きいから、働く人の数も半端じゃないの!たまに医学部〇〇部門とかで
パートの求人が出るのよ。yuyuさんの言う通り、仕事となると毎日でしょ。それに、ずっと
あのネズミ部屋の中に こもっての仕事だからね~。その部屋の管理を一人に全て
任せるってことだから、一緒に働く人もいないの。職場の話し相手はネズミたち・・・。
考えてみたら、花粉症も酷いし大人になってから喘息ぎみだし、やっぱ良くないな~と
思って。それより何より一番の問題はニオイだけどね^^;
お互い、次 がんばりましょう!!
Commented by melmo-44 at 2010-11-04 08:33
ゆるりんさんへ
ゆるりんさんのご主人は研究室に?現場にでたり研究室にいったりするのかな。
看護師さんも、マウスやラットの部屋へ入ることがあるんですか??私が面接に
行ったところは、病棟と繋がってはいるけれど隔離されたかんじの場所で、
看護師さんの姿は全く見えませんでした。綺麗な病棟とは違って異質な感じでしたよ。
Commented by mittino38 at 2010-11-04 09:02
それはまた、変わったお仕事。
きっとラットの持ち上げ方が上手かったのね。
でも匂いは参るよね。
私なんて家の犬が下痢しただけでも、大変だと思うよ。
長く続けられそうな仕事が見つかるといいね!
Commented by melmo-44 at 2010-11-04 22:59
ミッチノさんへ
ほーんと!特殊な仕事でした。ラットもマウスも嫌じゃなかったけど、とにかくニオイがね・・・。
牛小屋とか豚小屋は、密閉されては いないじゃない?でも、このネズミ小屋は密閉状態。
空気清浄機が付いているそうだけど、凄いニオイだったの。
できれば長く続けられる仕事を探したいから、焦らずに探してみるね^^ありがとう♪
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by melmo-44 | 2010-11-02 11:38 | 母さんのこと | Comments(12)